この季節、夜はとくに明るい部屋には虫がやってきて、まだ乾いていない油絵の画面とキッスをして、そのままお陀仏。と、死骸をひとつひとつ親指の爪と人差し指の爪で(ピンセット代わり)剥がして、捨てていて、そのうち、ま、いいかと思い、筆で塗り込むようになり、これってなんだか儀式みたい、呪術みたい、と思う。
で、どんなにかわいらしいものをつくっても、わたしがどれだけうっとりしても、聞こえないくらいの悲鳴か、羽音が塗り込められてるこの絵は呪われているのよ。呪いをときに行かなくちゃ、と、これは友人の映像作品のセリフなんだけど、これを芝居っぽくJに言ったんだけど、全然わかっていないみたいだったから、「それはもう、はじまっているのです!」と机をどんどんと叩いた(こういう場面もあるのだ)それで、やっと気付いたJがニヤリとするのを見て満足する。