わたしの実家のベランダには外猫用の餌が置いてある。わたしの家の猫と、近所の飼い猫と、野良のための餌だ。そうして野良猫たちにはそれぞれ好き勝手な愛称がつけられて、見た目のことでとやかく言われたり、可愛がられたり馬鹿にされたりする。
「あさいち」という猫(野良)は「人間なんて」という顔をしたトラ猫で、ひどい三白眼をしている。人相(猫相?)も性格も悪い。まぁ猫だから、「馬鹿やろう」も「はやくめしよこせ」も「人間なんて」も「ニャー」だし「グルルル」な訳だから、可愛げがある。おまえなんて信用ならねぇ、という態度も、腹へったから来たけど、人間なんて大嫌いだ、と睨む目もとても可愛い。こっちを気にしながら餌をカリカリ食べるのもやっぱり可愛い。だけどあさいちみたいな顔をした人間は可愛くないんだろうなぁ。生き方は顔に出るだとか、30過ぎたらブスは自分のせいだとか、よく言うけど、私はあさいちみたいな顔にはならないように、へらへらと笑おうと思った。わたしは猫でないので、唸っても可愛げがないのだ。