雨がざあざあ降っている、ちいさいころのことを思い出していた。
雨が降っていたから思い出したわけではないし、雨にまつわる話でもない。
ちいさいころの私は宝石屋のチラシが好きで、あのキラキラした色とりどりの宝石が印刷された薄っぺらい紙をじーっと見ていた。すごく集中して、丹念に見ていた。それから、裏が白いチラシ(これに絵を描く)も好きだったんだけど、ツルツルした紙は鉛筆がすべって薄い色になってしまうから嫌で、サラサラした、画用紙が薄くなったようなチラシの裏に絵を描くのが好きだった。母に「裏が白いやつ、とっといて。」と言うんだけど、母は違いがわからずツルツルの紙も取っておく。わたしは「わかってないなあ」と思うんだけど、どういう紙質が好きかなんて、うまく言葉にできなかったから、我慢していた。それで「やっぱりこの紙はよくないな」と思いながらツルツルのチラシの裏にお姫様とかチューリップとかを描いていた。
今日は学校に行く。雨が急に降ったり、やんだりしていて、ときどきピカっと空も光って、おそろしかった。